悲しみにつけ込む罠!?「お悔やみ詐欺」の実録事件と今すぐできる撃退術

「お悔やみ詐欺」という言葉をご存じでしょうか?
これは、親族を亡くして深い悲しみに暮れている遺族の心の隙を狙った悪質な詐欺行為のことを指します。

家族を亡くした直後は、誰しも気が動転してしまい、普段であれば見抜けるような嘘や不審な要求にも冷静に対応できないことがあります。詐欺師たちは、まさにその“正常な判断がしにくい状況”に目をつけ、巧妙な言葉で近づいてくるのです。

このような被害に遭わないためには、あらかじめ手口を知っておくことが最大の防御策になります。どんな詐欺があるのか、どんな場面で注意すべきか――これから詳しく紹介していきますので、もしもの時の備えとしてぜひ頭に入れておきましょう。

「お悔やみ詐欺」とは遺族の動揺に付け込む悪質な金銭詐欺

「お悔やみ詐欺」とは、新聞やネット上のお悔やみ欄に掲載された情報を悪用して、遺族から金銭をだまし取ろうとする詐欺です。

お悔やみ欄は、本来であれば故人の死を周囲に伝え、関係者が葬儀に参列できるようにするためのものです。

故人の名前や葬儀の日時、場所、場合によっては住所までが記載されるため、多くの人に訃報を届ける手段として有効とされています。

しかし、詐欺師たちはこの情報を利用し、「故人から借金を受けていた」「債務の保証人になっていた」などと主張し、遺族に金銭の支払いを求めてくるのです。

しかも、そうした内容には、故人の名誉を傷つけるような内容が含まれているケースもあり、遺族が恥を恐れて誰にも相談できず、言われるままに支払いをしてしまう例も少なくありません

さらに、「明日までに返済を」「支払わない場合は訴訟を起こす」など、緊急性を強調することで判断力を奪い、冷静な対応を難しくする手口が使われるのも特徴です。

こうした詐欺は、故人を悼む遺族の気持ちにつけこむ非常に卑劣な犯罪です。もし見知らぬ相手から金銭の請求があった場合は、絶対に一人で判断せず、専門家に相談するようにしましょう。

 

実際に発生したお悔やみ詐欺の衝撃的な手口とは

2019年、お悔やみ詐欺による悪質な事件が実際に発生しました。加害者は、新聞のお悔やみ欄に掲載された情報を悪用し、故人の遺族宛に巧妙に偽装された文書を郵送するという手口を使っていました。

その文書の内容は非常に悪質で、「故人から児童ポルノに関するわいせつなDVDを預かっていた。今後の処分に費用がかかるため、費用を用意してほしい。もし支払わないなら警察に届け出る」といったものです。

このような内容は、たとえ根拠がまったくなかったとしても、「故人がそんなものを所持していたかもしれない」と不安を煽られ、他人に相談しにくくなるのが人情です。

特に「児童ポルノ」といった社会的にも大きな非難を受ける内容が含まれていたことで、遺族は警察への相談や誰かに相談することすら躊躇してしまう状況に追い込まれます。

この事件では、複数の家庭に対して同様の書面が送られたことで発覚し、詐欺を働いた男性は逮捕されました。しかし、このような手口は形を変えて再び発生する可能性が高く、決して他人事ではありません

お悔やみ欄を利用する際には、葬儀の場所や日時の記載は必要最低限にとどめ、住所の記載は控えるなどの配慮が必要です。万が一、不審な手紙が届いた際には、内容の真偽を自分で判断せず、すぐに警察や弁護士などの専門機関へ相談することが大切です。

 

「お悔やみ詐欺」で問われる罪って?

お悔やみ詐欺は、遺族の心情に付け込んで金銭をだまし取る極めて悪質な犯罪であり、詐欺罪だけでなく場合によっては名誉毀損罪にも該当する可能性があります。

まず、詐欺罪については刑法246条に規定されており、「10年以下の懲役」が科せられます。罰金刑は規定されていないため、詐欺罪で有罪となれば実刑判決を受ける可能性があります。ただし、初犯の場合は執行猶予が付くケースもあります。

さらに、詐欺の内容が「故人が不名誉な行為をしていた」といった虚偽を含み、遺族が第三者に相談しづらい状況に追い込むようなケースでは、刑法230条の名誉毀損罪が適用されることもあります。名誉毀損罪が成立すると、「3年以下の懲役若しくは禁錮、または50万円以下の罰金」が科されます。

このように、お悔やみ詐欺は複数の犯罪に該当する可能性があり、非常に悪質かつ重い罪となり得ます。被害に遭った場合は一人で抱え込まず、警察や弁護士など専門家に相談し、早めに対処することが大切です。

 

お悔やみ詐欺に遭った際の相談先

お悔やみ詐欺に巻き込まれた、または被害が疑われる場合は、速やかに第三者へ相談することが重要です。特に以下の窓口を活用しましょう。


消費生活センター
全国各地に設置されている公的な相談窓口で、詐欺被害や不審な請求に関する相談を受け付けています。もし他にも同様の被害があれば、連携して解決を図ってくれます。
👉【消費者ホットライン】188(最寄りのセンターへ自動接続)

警察(最寄りの交番・警察署)
詐欺だと明らかに分かる場合は、速やかに最寄りの警察に相談・通報を行いましょう。被害が確認されれば、詐欺事件として捜査が始まります。

弁護士
「詐欺かどうか判断がつかない」「故人に不名誉な内容が書かれていて相談しにくい」と感じた場合は、まずは弁護士へ。守秘義務のある弁護士ならプライバシーを守りながら適切な対応をアドバイスしてくれます。


どの窓口を利用するにしても、届いた書面や封筒、封入物は証拠として大切に保管しておきましょう。遺族だけで抱え込まず、必ず誰かに相談して早めに解決を目指してください。

 

まとめ

お悔やみ詐欺は、新聞のお悔やみ欄を悪用して遺族に巧妙に近づく卑劣な詐欺行為です。このような事件が存在することを理解した上で、住所を新聞に掲載した場合や、不審な文書が届いた時には冷静に対処することが重要です。そのような手紙を受け取った際は、警察や消費者センター、弁護士などに相談することで、迅速に問題解決に導くことができます。