今日からスッキリ!一人でできる“おひとりさま終活”スタートガイド

配偶者や子どもといった家族が近くにおらず、いわゆる「おひとりさま」として老後を過ごす方も、近年では決して珍しくなくなっています。ただ、そうした状況では、自分が倒れたときや亡くなった後のことについて、誰が対応してくれるのかを事前に考え、しっかり準備を進めておくことが重要です。

特に、おひとりさまの相続は、家族がいる場合と比べて手続きが複雑になったり、相続人がいない場合には遺産が国庫に帰属するなど特有のリスクがあります。そのため、元気なうちにきちんと対策を立て、終活の一環として相続の準備を整えておくことが、安心できる老後の暮らしにつながります。

この記事では、おひとりさまが知っておくべき相続の基本や、具体的な対策の方法について詳しく解説していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

「おひとりさま」って結局なに?

「おひとりさま」とは、一般的に配偶者や子ども、兄弟姉妹といった近しい家族が身近にいない状態で、日常生活を一人で送っている方を指します。最近では高齢化が進む中で、その数は確実に増加傾向にあり、独身の方はもちろん、兄弟のいない方、あるいは夫婦のどちらかが先立たれた後に残された配偶者なども、広い意味でおひとりさまに含まれると考えられます。

このような状況では、普段の暮らしにおけるちょっとした困りごとから、財産の管理や健康上のリスクまで、一人で抱え込むことになる可能性が高くなります。そのため、将来に向けての準備や具体的な対策を元気なうちからしっかりと考えておくことが、安心した暮らしを送るための大切なポイントとなるのです。

 

今さら聞けない!「終活」とは?

終活とは、文字通り「人生の終わりに向けた活動」を意味し、資産や所持品の整理、医療や介護の方針決定、さらにはお葬式やお墓の準備まで、将来の相続や自分の死後に備えるための幅広い準備を指します。単に亡くなった後のことだけではなく、もし認知症を発症したとき、どのような医療や介護を受けたいかといった内容まで、事前に家族や信頼できる人に自分の意思を伝える手段でもあります。

終活を進めることで、相続手続きや財産管理の複雑さに直面する相続人の負担を軽減できるほか、残された家族が迷わずにすむという精神的な支えにもなるでしょう。その方法の一つとして近年よく使われるのが「エンディングノート」です。このノートには、銀行口座や保険などの重要な情報とともに、本人の希望や想いを記録しておくことができ、家族や大切な人々に自分の意思をわかりやすく伝える役割を果たします。

ただし、注意しなければならないのは、エンディングノート自体には法的効力がないという点です。たとえば、「友人Aにすべての財産を譲りたい」とノートに記していても、それだけで正式な相続の効力を持つわけではありません。財産の分配など、法的拘束力が必要なことを確実に実現するためには、遺言書を作成するなど、法的手続きに基づいた方法を併せて検討することが必要です。

 

今日から始めるおひとりさま終活マニュアル

おひとりさまの場合、日常の生活はもちろん、相続や死後の手続きについても基本的にすべて一人で準備を整える必要があります。そのため、一般的な終活に比べて、より入念な計画と対策が求められるといえるでしょう。

特に、相続人がいない場合には、遺産が自動的に国庫へ帰属してしまう可能性があるため、財産の行き先や死後の事務を託せる人を元気なうちから決めておくことが重要です。また、体調を崩したときや認知症などで判断能力が低下した場合に備え、医療や介護の方針を具体的に記録し、信頼できる人に伝えておくことも必要です。

ここでは、そうしたおひとりさま特有の終活のポイントについて、わかりやすく説明していきますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

 

① 孤独死を避けるための備え

おひとりさまにとって、最も大きな不安のひとつが、誰にも看取られないまま亡くなってしまい、発見までに時間がかかる「孤独死」のリスクです。このような事態を避けるためには、日頃から地域の中で人とのつながりを意識的に作っておくことが大切です。

たとえば、地域コミュニティに参加したり、ボランティア活動に加わったりすることで、周囲の人たちとの関係を築き、万が一の際にも気づいてもらえる環境を整えておけます。また、訪問介護や見守りサービスを利用するのも有効な方法です。特に最近では、自治体が民間の見守りサービスと連携して、安否確認の仕組みを提供している地域も増えています。

自分が住んでいる地域で、どのようなサービスが受けられるのかを事前に調べておくことで、いざというときに孤立を防ぎ、安心して生活を続けられる体制を整えられるでしょう。

 

② 身元保証人を決めておく

多くの病院や介護施設では、入院や入所の際に身元保証人が求められることが一般的です。しかし、身元保証人がいない場合、必要な医療や介護サービスを受ける手続き自体が進められず、最悪の場合には受け入れを断られてしまうことも珍しくありません。

もし家族や信頼できる友人など、身近に保証人をお願いできる相手がいない場合は、民間の「身元保証サービス」を検討してみるのも一つの方法です。これは、一定の費用を支払うことで、保証人としての役割を民間事業者が引き受けてくれる仕組みで、近年ではおひとりさまや単身世帯の増加に伴い、需要が高まっています。

こうしたサービスは、弁護士事務所、一般社団法人、NPO法人などさまざまな団体が提供しており、事業者ごとに内容や料金体系、提供されるサービスの範囲は大きく異なります。中には、単なる身元保証にとどまらず、見守り契約や死後事務委任契約とセットで提供されるプランも用意されているため、自分の希望や状況に合った事業者を慎重に選ぶことが重要です。

また、施設によっては「任意後見人」や「成年後見人(後見・保佐・補助)」を立てることで入所が認められるケースもあります。これらの制度については、次の項目で詳しく解説していきますので、併せて理解を深めておくと安心でしょう。

 

③ 認知症に備える

元気なうちから、自分の資産状況をきちんと整理し、もし将来、資産や日常のお金の管理が難しくなったときに備えておくことは、おひとりさまにとって非常に大切な準備です。特に認知症などで判断能力が低下すると、預貯金の管理や支払いの手続きがスムーズに行えなくなるリスクが高まります。

そうした場合に役立つのが、成年後見制度や家族信託制度といった仕組みです。これらは、あらかじめ信頼できる人を決めておくことで、自分が判断できなくなった際に代わりに資産管理や必要な契約を行ってもらえる制度ですので、早めに検討しておくと安心でしょう。

また、高齢になると、食事の用意、洗濯、掃除など、日常生活のさまざまな場面で支援が必要になることがあります。民間の生活支援サービスを利用するのも一つの選択肢ですし、介護保険の認定を受ければ、介護保険サービスとしてサポートを受けることも可能です。どのような支援が必要か、どこでどのサービスが受けられるのかは、地域包括支援センターで相談することができますので、近隣の窓口を確認しておくとよいでしょう。

 

④ 遺言書を作成する

おひとりさまにとって、遺言書を用意しておくことは非常に大切な準備の一つです。遺言がない場合、遺産の分配は法律に従って行われますが、もし法定相続人がいない場合は、せっかく築き上げた財産が最終的に国庫へ帰属してしまう可能性があります。こうした事態を防ぐためにも、遺言書を作成し、自分の財産を大切な友人や信頼できる団体、慈善活動など、思いを託したい相手にのこせるようにしておくことが重要です。

さらに、遺言書は財産の分配内容だけでなく、葬儀の方法やペットの世話についての希望など、死後の具体的な意向を記すこともできます。こうした細やかな希望を事前に明文化しておくことで、残された人々の負担を軽減し、自分の望む形での別れを実現しやすくなるのです。

なお、遺言書を作成する際は、より確実で法的効力が担保される「公正証書遺言」の形式を選ぶことをおすすめします。作成にあたって不安がある場合や内容を整理しきれない場合は、弁護士や司法書士といった専門家に相談し、助言を受けながら進めると安心です。準備を整えることで、心に余裕を持って日々を過ごせるようになるでしょう。

 

⑤ 死後の手続き事務の依頼先を決めておく

人が亡くなった後には、葬儀や納骨といった大きな儀式だけでなく、入院費用の精算やクレジットカードの支払い・解約、各種契約の終了手続きなど、実に多くの事務処理が発生します。家族がいればこうした役割を自然に引き受ける場合が多いですが、おひとりさまの場合は、これらを任せられる人を事前に決めておく必要があります。

もし身近に頼める親族や相続人がいない場合でも、心配はいりません。生前のうちに「死後事務委任契約」を結んでおくことで、司法書士などの専門家や専門業者に死後の事務手続きを正式に依頼することが可能です。この契約を活用することで、亡くなった後に残された人が誰もおらず、手続きが進まないという事態を回避できます。