年齢は関係ナシ!世代別にわかる生前整理スタートのベストタイミング&得するコツ

生前整理という言葉を耳にしたことはありますか?この言葉は「終活」という考え方とともに、近年少しずつ世間に浸透し始めています。生前整理とは、自分が亡くなった後に残された家族が困らないよう、あらかじめ身の回りの物や財産を整理しておく作業のことです。

とはいえ、「まだ自分には早い」と感じる方や、「いざ始めようとしても、何から手を付ければいいのか分からない」と悩む方は少なくありません。気になってはいるけれど、結局そのままになっているというケースも多いのではないでしょうか。

今回のコラムでは、そんな生前整理について、世代ごとに異なるメリットや、具体的にいつ頃から始めればいいのかを分かりやすく解説していきます。漠然とした不安を抱えるよりも、正しい知識を持って少しずつ準備を進めることで、心の負担を軽くできるはずです。ぜひ最後まで読んで、参考にしてみてください。

 

失敗しない生前整理の目的とスムーズに進めるポイント

まず初めに、生前整理の目的について理解しておきましょう。

生前整理とは、自分が生きているうちに身の回りのものを整理し、亡くなった後に家族や親族へ余計な負担をかけないようにするための大切な作業です。人が亡くなった後には、残された家族が遺品整理を行う必要がありますが、あらかじめ生前整理を済ませておけば、その作業の負担は大幅に軽減されます。つまり、自分の手で家族の負担を減らし、安心を残すことができるのです。

「整理」と聞くと、つい物を捨てる大掃除のようなイメージを持ちがちですが、生前整理で見直すべきなのは物だけではありません。所有している財産の確認や整理も重要なポイントです。なぜ財産の整理が必要かというと、それはお金が関わる問題が相続と直結しており、後に大きなトラブルの火種になりやすいからです。遺された家族が揉めないようにするためにも、自分が元気で判断できるうちにきちんと整理を進め、問題の種を一つずつ取り除いておくことが求められます。

生前整理は、自分のためだけでなく、家族の未来のためにも重要な意味を持つ作業です。何から手を付けていいかわからないという方も、まずはこの目的をしっかり理解することから始めてみましょう。

 

生前整理をスムーズに進めるためのコツ

生前整理を進める際は、自分が亡くなった後のことを想像しながら取り組むのが大切なコツです。「もし自分がいなくなったら、残された家族はどうなるだろう」「この大量の荷物を家族に片付けさせるのは大変だろうな」という視点を持つことで、整理の方向性が見えやすくなります。

たとえば、今大切にしている物を手放すことを考えたとき、ただゴミとして処分するのは忍びないと感じる方も多いのではないでしょうか。価値を理解してくれる人や、必要としてくれる人に譲るという考えで整理を進めれば、気持ちも前向きになり、仕分け作業もはかどるはずです。使う予定のない物は、リサイクルに出したり知人に譲渡したりすれば、整理自体が有意義な行動になります。一方、亡くなるまで手元に置いておきたい物については、死後どのように扱ってほしいかをエンディングノートに書き残しておくと、家族や親族が困らずに済みます。

もし物が多すぎて整理が進まなかったり、何から始めれば良いか分からなくなった場合は、整理収納アドバイザーや遺品整理・生前整理を専門にサポートする業者に相談するのも一つの方法です。財産整理に関して不安があれば、法律の専門家に相談する選択肢もあります。専門家に頼ることで、悩みが意外とあっさり解決することもありますので、迷ったらプロの力を借りることを検討してみてください。

 

生前整理を始めるのに最適なタイミングとは?

生前整理は、基本的にいつから始めても問題ありません。しかし「いつでも良い」と言われると、逆にタイミングが分からず悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。

実際のところ、生前整理は年齢に関係なく、自分が「そろそろ整理しておきたい」と感じたときがベストなスタートのタイミングです。ただ、そうはいってもきっかけがないと動き出しにくいものです。そこで、この章では生前整理を始めやすい代表的なタイミングをご紹介します。ぜひ参考にして、ご自身の状況に合わせた準備を進めてみてください。

 

退職を迎えたタイミング

定年退職や長年の仕事を終えることをきっかけに、生前整理を始める方は少なくありません。仕事をしていた頃は忙しくてなかなか時間が取れなかった人でも、退職後であればじっくりと時間をかけて整理に取り組むことができます。この機会に「これまで歩んできた自分の人生」を振り返りながら、「これからの時間をどう過ごしたいか」をじっくり考えてみるのも良いでしょう。

また、仕事一筋で過ごしてきた方にとっては、退職後にふと目標を失い、いわゆる燃え尽き症候群のような状態になってしまうケースもあります。そんなとき、新たなやりがいや目標として生前整理を始めるのは非常に前向きな選択です。これまでの自分を見つめ直し、必要なもの・大切なものを整理することで、次のステップに向かうきっかけにもなるでしょう。

 

子育てが一段落したタイミングで始める

お子さんが成人したり、結婚や進学を機に実家を離れたりするタイミングは、生前整理を始める絶好のきっかけの一つです。これまで家族中心だった生活が落ち着き、自分のために使える自由な時間が一気に増えるため、このタイミングならじっくりと時間をかけて整理を進めることができるでしょう。

また、子育てが終わったことで生活環境や家の中の使い方が変わることも多く、自然と整理を意識する場面が増えます。こうした節目を機に、ご自身のこれまでの歩みやこれからの暮らしを見つめ直し、無理のない範囲で少しずつ生前整理を進めてみるのも良い方法です。

 

将来に不安を感じたときに始める

例えば、親しい人の訃報や突然の入院の知らせを受けたり、大きな災害のニュースを目の当たりにしたとき、人はふと「もし自分だったら」と死や将来を身近に感じ、不安になるものです。こうした「もしも」に備える気持ちから、生前整理を始めようと決意する人も少なくありません。

もちろん、ここまでに挙げた例はほんの一部です。生前整理をいつ始めるか迷っている方は、人生の節目や何か大きな出来事をきっかけに取り組み始めるのも一つの手です。ただ、最初にお伝えしたように、生前整理は必ずしも決まった時期があるわけではなく、いつから始めても構わない作業です。大事なのは、ご自身の気持ちとしっかり向き合い、「今だ」と感じたタイミングを逃さないことです。無理のないペースで少しずつ進めていきましょう。

若い世代で生前整理を始める人も増えている

生前整理というと高齢者が行うものというイメージを持つ方が多いかもしれませんが、実は最近、20代や30代といった若い世代でも生前整理を始める人が増えてきているのをご存じでしょうか。人生の終わりに備えるという意味だけではなく、今の自分の生活や持ち物を見直し、身軽に整えていく手段として注目されているのです。

この章では、若い世代の人たちがどんなきっかけで生前整理を始めるのか、そしてそれによってどんなメリットが得られるのかについて詳しく解説していきます。ぜひ参考にし、年齢を問わず「今の自分に必要な整理」を考えるきっかけにしてみてください。

 

【20代・30代】生前整理を始めるきっかけとメリット

万が一のときに備えて安心するために

たとえ今は健康で元気に過ごしていたとしても、予期せぬ事故や突然の病気によって、生活が一変する可能性は誰にでもあります。最悪の場合、命を落としてしまうこともあれば、命は助かっても寝たきりの状態になったり、会話が難しくなったりして、自分の意思を家族に伝えられなくなるケースも考えられます。

そんな「もしも」の事態に備えて、あらかじめ生前整理をしておくと、自分の考えや重要な情報をしっかり残しておくことができます。これにより、残された家族は精神的な負担を大きく減らせるだけでなく、安心して状況に向き合うことができるのです。若い世代であっても、生前整理を進めておくことは、家族への思いやりにつながります。

 

自分自身の未来と向き合う機会になる

生前整理に取り組むことで、自然とこれまでの人生を振り返り、これからの未来についてじっくり考える時間が生まれます。特に20代や30代は、結婚や昇進といった大きなライフイベントが次々と訪れる時期です。そのため、自分自身や周囲の友人に人生の変化があったときに、「自分はこれからどう生きたいのか」「どんな目標を持って過ごしたいのか」と考えるきっかけになることも少なくありません。

生前整理は単なる片付けではなく、自分の価値観や未来の方向性を見つめ直す貴重な時間でもあります。若いうちからこうした視点を持つことは、今後の人生設計を前向きに考える上でも大きなメリットになるでしょう。

 

生前整理へ準備すること

まず一つ目は、エンディングノートの作成です。エンディングノートは「終活ノート」とも呼ばれ、自分の基本情報や葬儀に関する希望、メッセージなどを残された人に伝えるためのツールです。法的な拘束力はありませんが、自分の意思を家族や友人にしっかり伝える有効な手段となります。形式は決まっていないため、紙のノートを使ってもよいですし、パソコンの文書作成ソフトなどでまとめても問題ありません。特に若い世代の場合は、ネット上のサービスで使用しているアカウントやパスワードの備忘録としてエンディングノートを活用すると便利です。ただし、個人情報が多く含まれる内容なので、作成後は厳重に保管するよう注意が必要です。

次に、デジタル遺品に該当するものを整理しておくことも大切です。若い世代は高齢の方と比べ、デジタル製品を日常的に使う機会が多く、ネット銀行の口座や電子マネー、SNSアカウント、スマートフォンやパソコン内の写真・動画など、整理が必要なデジタル資産が多岐にわたります。端末内のデータは、必要に応じて外付けのハードディスクに移したり、似た写真は思い切って削除したりと、定期的に整理を心がけると良いでしょう。こうした準備を進めることで、いざというとき家族が困らずに済むのです。

 

生前整理を意識し始める世代

 

次に、生前整理を意識し始める40代、50代、60代について、そのきっかけやメリットを解説していきます。この年代は、仕事や家庭、健康などさまざまな面で人生の節目を迎えることが多く、これからの過ごし方について考える機会が自然と増えてくる世代です。そのため、生前整理を始める人が最も多い、いわば「生前整理のボリューム世代」ともいえるでしょう。

ここからは、それぞれの年代で生前整理を始めるきっかけや、具体的に得られるメリットについて詳しく見ていきます。自分の状況と照らし合わせながら、ぜひ参考にしてみてください。

 

【40代・50代・60代】生前整理を始めるきっかけとメリット

自由な時間が生まれたことで取り組みやすい

40代、50代、60代の世代は、これまでの章で触れた「生前整理を始めやすいタイミング」に当てはまる方が多く見受けられます。子育てが一段落したり、退職後に時間の余裕ができたりと、日常生活において自由に使える時間が増える時期だからこそ、生前整理にしっかり取り組むことができるのです。

この世代は、まだ体力も判断力も十分に備わっているため、老後の生活やこれからの人生設計を具体的に描けるのが最大のメリットといえます。例えば、これまで忙しさの中で後回しにしてきた趣味を改めて実践し、人生をより豊かに楽しむ時間を作ることができます。また、もし将来的に老人ホームへの入居を考えている場合は、今のうちから必要な準備や整理を少しずつ進めることも可能です。こうした具体的な行動が取れるのは、この年代ならではの強みといえるでしょう。

 

ケガのリスクを未然に防ぐことができる

年齢を重ねると、たとえ家の中で過ごしているだけでも思わぬリスクが生じることがあります。たとえば、わずかな段差や何もない場所でもつまずきやすくなり、転倒してしまうことがあります。また、高い場所に物を置いていると、年齢とともに立ち上がることや手を伸ばすことが難しくなり、無理をしてケガをする可能性も出てきます。

こうしたリスクは、体が元気に動く間に生前整理の一環として住まいを見直し、安全な環境に整えることで回避できます。家の中の不要なものを処分し、動きやすい空間を確保することで、日常生活を安心して過ごせるようになります。まだ体が自由に動く今だからこそ、未来の自分のために安全な住環境を整えておくことが大切なのです。

 

生前整理へ準備すること

まず一つ目は、資産の整理や保険の見直しです。投資を行っていたり、不動産や動産を複数所有している方は少なくないでしょう。たとえば、株式や証券取引のために複数の口座を持っている場合、それらを一つにまとめたり、不要な口座を解約することで管理がぐっと楽になります。また、不動産や動産は相続時にトラブルのもとになりやすいため、処分や売却を考える際には必ず家族と相談して進めることが大切です。特に、繊細な美術品などは管理方法をエンディングノートにまとめておくと、いざというとき家族が安心できます。

次に、保険はライフステージに応じて見直すことが推奨されます。現在のプランが今の自分に合っているかを確認し、必要がなければ見直すことで無駄な出費を減らし、将来のために有効活用できる資金を増やせます。

そしてもう一つおすすめしたいのが、やりたいことリストを作ることです。誰にでも、心の中に「やり残したこと」はあるはずです。挑戦したいこと、会いたい人、行きたい場所を一度書き出してみましょう。実際に新しいことを始めたり、会いたかった人に会ったりすることで、心が満たされ、人生そのものもより豊かに感じられるはずです。

このように、40代・50代・60代では若い世代とは少し違ったきっかけやメリットがありますが、どの世代であっても生前整理は自分自身の生活をより充実させるきっかけになるのです。

 

生前整理で気をつけておきたいこと

生前整理を始める時期に関係なく、共通して意識しておくべき注意点があります。

まず一つ目は、エンディングノートを定期的に更新することです。

エンディングノートは一度書き上げたら終わりではありません。資産状況や住環境、考え方は時間の経過とともに変化していくものです。せっかく書いた内容が古いままでは、いざという時に役立たない可能性がありますので、定期的に見直して情報を最新の状態に保つようにしましょう。

次に注意したいのは、相続について必ず家族や親族と相談することです。

生前整理は基本的に自分で進める作業ですが、遺産相続に関わる部分は独断で決めるのではなく、相続人にあたる人たちと直接話をしておくことが重要です。自分が元気なうちだからこそ、家族としっかり向き合い、納得できる形を作っておくことが後々のトラブル回避につながります。

さらに気をつけたいのは、大切な物をうっかり捨てないことです。

生前整理では不要な物を手放す決断が大事ですが、必要な物まで処分してしまうと後悔することがあります。また、自分にとって不要だと思ったものでも、家族にとっては「残しておいてほしかった」と思われることがあるため、特に思い出の品や価値のある物は、親しい人と相談しながら整理を進めるのがおすすめです。

最後に、生前整理は亡くなった後のために行う作業だからこそ、必要以上に死を意識して気分が沈んでしまうことがあります。もし心が疲れてしまったと感じた時は、無理せず一度休憩し、心が落ち着いてから再開するようにしましょう。焦らず自分のペースで進めることが大切です。