放置は危険!高齢者も若者も急増中のセルフネグレクトとは?
セルフネグレクトとは
セルフネグレクトとは、自分自身に対する関心や配慮が著しく低下し、健康や安全が脅かされる状態を指します。意欲の喪失により、日常生活に必要な行動ができなくなり、次第に生活環境や身体の衛生状態が悪化していきます。
特徴的なのは、掃除・洗濯・食事の準備・ゴミの処理など、生活の基本的な行動が疎かになることです。
その結果、住環境が不衛生になり、いわゆる“ゴミ屋敷”や“汚部屋”と呼ばれる状態に陥ることもあり、セルフネグレクトの兆候として、「何かをしたい」「欲しい」といった欲求そのものがなくなることがあります。食べることや清潔を保つことなど、最低限の自己ケアすら行わなくなるため、周囲から見ても異変が明らかになることが多いです。
さらに進行すると、他人との関わりを避けるようになり、孤立が深まっていく傾向も見られます。対人関係の断絶は、精神的な支えを失うことにつながり、状況をより深刻化させてしまう可能性があります。
- 自分の身なりや衛生状態に無関心になる
- 生活に対して無気力・無関心になる
- 他者との交流を避け、孤立する
このような傾向に気づいたときは、早めに声をかけたり、専門機関に相談するなどの対策を講じることが大切です。セルフネグレクトは放置すればするほど、心身ともに大きな影響を及ぼします。周囲の理解と適切なサポートが、本人を回復へと導く鍵となります。
高齢者だけでなく若者にも広がるセルフネグレクトの現状
セルフネグレクトは、高齢者特有の問題と捉えられがちですが、実際には若年層にも広がりを見せている深刻な社会課題です。
内閣府が平成23年3月に発表した「セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査(幸福度の視点から)」によると、平成21年当時の日本国内におけるセルフネグレクト状態の高齢者は、推定で9,381人から12,190人(平均10,785人)にのぼると報告されています。これだけ多くの人が、生活の質が著しく低下した状態で支援を受けずに過ごしていた可能性があることが分かります。
一方で、若者のセルフネグレクトに関する状況は、一般社団法人日本少額短期保険協会が公表した「第6回 孤独死現状レポート」から読み取ることができます。この報告によれば、若年層の孤独死の背景には自殺の割合が非常に高いという特徴があることが明らかになっています。
たとえば、2021年6月時点のデータでは、20代以下の孤独死者のうち、実に26.5%が自殺によるものだったとされています。人数としては高齢者に比べれば少ないものの、若年層におけるセルフネグレクトは、自傷行為や心理的な問題と密接に関連している傾向が強いのが特徴です。
このように、セルフネグレクトと一口に言っても、高齢者と若年層とでは、その背景や求められる支援の方法が大きく異なります。高齢者の場合は身体的・社会的な孤立や健康問題への対応が中心となる一方で、若年層ではメンタルヘルスのケアや社会との接点を取り戻すための支援が求められることが多いです。
セルフネグレクトになる原因とは
セルフネグレクトは、決して高齢者だけに限った問題ではありません。年齢や性別を問わず、誰でも陥る可能性がある状態です。その背景には、心身の変化や生活環境の影響など、さまざまな要因が関係しています。
体力の衰えや病気の後遺症がセルフネグレクトを招く理由
内閣府が行った調査によると、セルフネグレクトのきっかけや理由として、特に多く挙げられたのが身体的な機能の低下や病気・入院の影響です。
たとえば、老化や持病、事故などによって体の自由が利かなくなり、掃除や片付けといった日常の家事が困難になるケースがあります。視力の低下や筋力の衰えによって、日常の動作ひとつひとつに負担を感じるようになり、その結果として生活の質が下がり、家の中が荒れてしまうことも少なくありません。
さらに、脳梗塞やリウマチといった重い疾患や、その後遺症によって家事能力が著しく低下することもあるのです。本人としては、これまで通りの生活を望んでいたとしても、身体が思うように動かないという現実が、次第に意欲の低下を招いてしまいます。
実際、内閣府の調査によると、セルフネグレクトの要因として「疾病・入院など」が24%を占めていたという結果が出ています。これは、4人に1人が病気や身体の不調をきっかけにセルフネグレクト状態に陥っているということを意味しており、身体的な変化が生活意欲や自己管理に大きな影響を与えていることがうかがえます。